Kさんに教える(後編) H11・8/22

前編はこちら
 
「ねぇ、じゅんちゃん、ギター教えてくれない?」「ウン ウン・・・うん? えっ?」私は驚いてkさんを見たのである。  

 Kさんは本気らしかった。そう言えば前にも「みんなでひとつの事ができるっていいよね〜」
などということがあったのだった。我々は当時メンバーは時々変わったが夜遅くまで3コードのブルースのまねごとをしていた。

 「♪わいが北千住の町歩いているとあるわ、あるわ、物干し竿に女のパンツ」
とか「♪へい〜ねーちゃん!こっち向いてくれ、もうがまんできない〜」
などと深夜まで歌いまくり、近所のおやじから「ここは君たちの広場じゃな〜い!」と怒鳴り込まれたこともある。
 しかし、ママさんの理解で(というよりも首謀者である場合もあった。)
酒を飲んでは誰彼かまわずギターをとり歌の伴奏とかして楽しんでいたのだった。
Kさんはそんな連中を見ながらそれが楽しい事に思えたに違いない。

 何でみんなすぐに参加できるのだろうと思っていたらしい。
あるひとつのルールがあり、そんなにむずかしい事ではないのだがコード(和音)は三つでそれを12小節で一区切りで延々と繰り返し、リードギターはある程度の決まった音しか使わない。ただこれだけの事だったのだが、Kさんにとっては今日初めて来た客がすぐ仲間になり、中に入って、「おれが牛丼食ってたら!なかなかうまいなモ〜♪」などとリズムに合わせて歌い出しそれに対しギターがついていき、たまにコップでギターの弦の上を滑らせチュイ〜ン♪などとやると「オォー!」といい、回りがイェーなどと言うと自分もやや遅れて「イェイー!」と言ったりしているのだった。。

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 それからKさんは私の生徒となり私をある時は先生、またある時は師匠と呼ぶようになった。最初に先ずコードを教えた。
コードというものは例えばAというコード(和音)があった場合押さえ方は何種類かあるのだが、私は一番簡単な押さえ方を教えようとした。

 左の図の左側の三つの団子みたいな押さえ方である。上の方から1弦〜6弦となり、図では、2フレットの2.3.4弦を3本の指で押さえるわけだ。(ローコードといいます。)
ところがKさんは右側の人差し指を5フレットに置き指を4本使う押さえ方(ハイコードといいます)

がいいと言ったのである。なぜならみんなこの押さえ方でブルースを弾いていたからだ。指を4本使うより3本の方が楽なのだが、ハイコードの方がカッコいいと言ったので、私はハイコードで教える事にした。人差し指の押さえ方(バレーといいます)が最初はつらいのだが、大学のアイスホッケー部でスティックを握り、そして最近はゴルフクラブ、そしてまたギターのネックを握ろうとするKさんは今はキリンビールの中瓶を握り、「まあまあ、先生一杯」と二十歳そこそこの私のコップにコポコポ注ぐのだった。

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 A D7 E7の三つのハイコードを覚えたKさんにシャッフルのリズムを教える。
「♪タータタータタータタータ」
とリズムの切り方を教えるのだが、ママさんがKさんをからかい
「♪ず〜るず〜るず〜るず〜るになってるわよ、誰かの人生みたいに!」と言ってひやかすのだった。
 努力のかいがあって、Kさんはリズムが今いちだったが取り合えずサイドギターのリズム隊の一員に時々加わる事ができるようになった。
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 しかしKさんはさらなる飛躍を求め今度は、リードギターもしてみたいと言うようになったのである。
「あの、キュイーンと音がでるのをしたい」と言う、つまりギターの弦を指で押し上げるギター特有の(ベースもするときがあるが)チョーキングをしたいというのであった。「まあまあ、師匠!一杯」Kさんはギターのネックを握る前にまた中瓶を握りコポコポと私のグラスにビールを注ぐのだった。

   
私は一番簡単な「Aのブルースペンタトニック」のスケールを教えた。  左の図のポジションを順に押さえて右手で弦を弾くわけである。図で  いうと下側の6弦から@−C @−B @−B @−B @−C 
@−C
  と弾いていく。5フレットから弾き始めるのだが音はA.C.D.E.G(ハ長調のドレミで言うとラドレミソ)の5つで指使いは@が人差し指、Bが薬指、Cが小指である。
これはロックギターでは最も多く使われるスケールでポジションは他にもあるが、クラプトン、ベック、ペイジなどブルースから影響を受けた70年代の名ギタリストは12音階のうちこの5個の音にプラス2個くらいの音だけで素晴らしいフレーズを鳴らしていた。
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 Kさんにペンタトニックスケールを教え、3コードのバッキングをし自由に弾かせてみるが、様にならないのでとりあえず「キュイーン」のチョーキングを3弦のBと2弦のC(スケールは小指を使うがチョーキングする時は薬指を使い押し上げる)でする事と教えるとKさんは毎日のように練習をし、私のいない時に「上達したろ俺って!」とギターを握り、回りの連中に吹いているらしかった。

 だいたいこの程度、楽しめたらいいだろうと思っていたのだが、しかしKさんはまだ先を目指していたのであった。店で会うと「やぁ〜まあまあ先生一杯」とニコニコしながらコポコポと相変わらず中瓶を注ぐ。そして今度はユーミンの75年の大ヒット曲「あの日にかえりたい」をやりたいと言い出したのであった。
かくして♪タッタッタタータ*タタータタタータだかのボサノバだかサンバのリズムを適当に教えるハメになったのである。
 
 そのころまでにKさんに教えたコードと言えばA・D7・E7それにC・Dm・Em・F・G7・AmそれにG・C7・B7そんなものだった。だいたいAのブルースとGのブルース、それにフォークの循環コードみたいなものを教えておけば店でやる曲には充分だった。大概セッションのまねごとはAかGで始まり、あとよくやる曲は残念ながら最近亡くなったが西岡恭三の「プカプカ」だったのだがこれはCから始めていた。

 Kさんがリードはどうやるのと聞くと私は出だしのコードがAとかCまたはAmだったらAのペンタトニックで適当に。後はセンスねと教えていたのだった。
「ほら、俺ゴルフの事よくわからないけどクラブでも何番アイアンとか色々迷っても打ったらあまり変わらないってあるでしょ。あれと一緒ですよ。プロじゃないし

Kさんはそれを聞くと「いや、ゴルフはね。奥が深い」と言い始めた
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次回はオマケ編 一発録りです。

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