赤いメット(bar4)  H11・7/26

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 環状8号線にあるバイク屋を訪ねた後、信号で3台のマシンが並んだ。青信号とともに
丈治のZ2、松のKATANA、そしてCBXが気持ちよく走り出す。

 松は次の信号で止まったときフルフェイスのシールドを上げ、大きな声でCBXに言った。
「速いなぁ。あんた!」
CBXがシールドを上げ、両手でタンクをパタパタ叩き
「400よ!」
と言いにこっとした。アクセルをあおると気持ちよいシューンというCBXの4気筒の排気音が伸びる。

 赤いヘルメットからはみ出た長くウェーブのかかった栗色の髪がこげ茶色の皮ジャンにフワフワかぶさっていた。

 再び信号が変わり3台は走り出す。次の交差点で信号が黄色に変わり遅れていた丈治のZ2は止まったが2台は走り抜けた。

・・・・・・・

 それから一ヶ月ほどたったある日
明治通りの渋谷の場外馬券売場の近くに松はバイクを止めバイクにヘルメットをロックしようとしたとき、そばにCBXが止まった。

 ピースサインを出しヘルメットを脱いだ女は次にグローブをはずし、そしてうなじのあたりの栗色の髪を気にしながらにこっとした。鼻筋の綺麗な400の女だった。

 松が馬券を買いにきたと言うと女はKATANAの銀色のタンクをなでながら「一緒に行ってもいい?」と聞くのだった。
松はそれを聞きふとあることを思いつきCBXのナンバープレートをのぞいた。

「なに?」と女が聞く。
「7093!」

 阪神競馬場の桜花賞にシャダイダンサーが出走している。松は好きな吉永正人の騎乗するシャダイダンサーから流すつもりで馬券を買いにきたのだった。単勝は4番人気でダンサーは7枠だった。0の枠はないし9枠もない。3枠には良血の逃げ馬、単勝2番人気のハギノトップレディがいたのである。

 馬券売場を歩いている男達が女をじろじろ見る。革ジャンにジーンズの女はブーツのせいもあるが身長が170cm近くもあり目立つ。場外馬券売場は競馬場の鮮やかな芝生の緑と対照的に黒く光るコンクリートとむせるような匂いがした。

 女はもの珍しそうにあたりを見回して売場に並ぶ人の列を見ながら松の耳元に「切符を買うみたいね」と言った。女の息とかすかな香水の匂いに松はゾクっとした。

 「切符なら目的地で回収されるけど、ここのキップはほとんど回収されず、ゴミになる。」
といい黒い床に散らばる馬券を指さした。
 「動物園の山羊だったらエサになるわ」
女の名前はミキと言ったがなかなか面白い事を言う。

 ミキは松が馬券を買うのをみて自分も買いたいと言った。競馬は初めてと言ったので松は買い方を教えた。

 桜花賞はダンサーからレディに多めに後は4枠5枠へと買うつもりだと言ったら、自分もその通り買うと言う。
 「3−7 3000円 4−7 1000円 5−7 1000円」
おばちゃんが券をくれる。

 ミキの番だ。
 「3−7 1万円 4−7 1万円 5−7 1万円」
それを聞いて「オイッ!」と言ったが、ミキは意に介さずおばちゃんに3万円を差し出した。
・・・・・・
 レースが始まりハギノトップレディが逃げ、それをシャダイダンサーが追う。
赤いヘルメットをオレンジ色のヘルメットが追いかけるのが小さなモニターTVに映るが後ろの場所なので見づらい。

 松はオレンジと赤がくればいいんだとミキに言った。4コーナーを回ってもそのままだ。
直線に入りハギノトップレディとの差はまだちょっとある。

 「そのまま、そのまま!」松はいつしかミキの肩を抱きながら叫んでいた。回りの歓声が大きくなる。
 ゴール前のたたき合いそして赤いヘルメットがゴール板を駆け抜けた。吉永のシャダイダンサーが続いて駆け抜けようとしたとき
別の馬がスーッと交わしたように見えた。
 「アーッ」松が悲鳴を上げる。交わされたようだ。

 ミキが「オレンジ!オレンジよ!」と叫び松の腕をぐいぐいひっぱった。
「2位も3位もオレンジよ!」と叫ぶ。松は
再生のモニターを凝視した

・・・・・・・・
2着に同枠のタマモコトブキがきたのだった。ハナ差でシャダイダンサーを交わしていた。3−7で1550円ついたのである。。
払い戻しをして帰るとき、ヘルメットをつけた松はミキがかぶった赤いヘルメットにコツコツと自分の白いヘルメットをぶつけ「速いなぁ、赤って!」と言った。

 シールドの中のミキの顔は笑いでくしゃくしゃで目が柿のタネのように細くなりそれから2人は明治通りを広尾の方に走り出した。


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ハギノトップレディ
80年 桜花賞1着
80年 エリザベス女王杯1着

華麗なる逃げ馬
生涯成績:11戦7勝 2着0回 3着1回 着外3回

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