あいさつしたなまはげ H11・2/25


 秋田県のある農村の集落の話である。
その集落では毎年小学6年生が小正月になまはげと云う鬼になり各家々を訪れ、泣ぐ子えねが〜と大声で家の人をおどすのだ。

 なまはげは秋田県の男鹿半島に伝わる行事だが全県で広く行なわれているようで
なまけものや子供を鬼の面をかぶったなまはげが脅すが本来は福の神が春に来訪するという信仰から生じたものらしい。

 ものすごい怒声をあげ荒ぶり家の中へ大包丁と桶(切り落とした生首を入れるためのものらしい)を持ち、強盗のようにドサドサ押し入り酒や金銭を持ち帰るのである。(各家で酒や金銭でもてなすの意だが)

 初めて見る人はその恐ろしき立ち振る舞いに驚愕し子供は阿鼻叫喚の体となり野蛮といわれてもしかたのない行事だ。

 本来大人が鬼になるのだがその集落では6年生が鬼になるのであった。
 最初に女の子が門付け(案内人)として家を訪れ「これからなまはげがきます。」
と触れる。そして恐ろしい鬼がその後 ウォーウォーと奇声をあげやってくる・・・・・はずだった。

 コンコンとドアを誰かがノックした。「はい」と言って玄関を開けると、恐ろしい鬼の面が現れれたが三頭身くらいのいくらか小さい鬼であった。鬼はものすごい形相の面の下から言った

 こんばんは、なまはげです。泣ぐ子いませんか?」 静かな声でまるで子供に遊びに来たような声である。・・・・・・・オイオイ

 わずかな沈黙の後家主が言った。「ダメダメ!!そんななまはげじゃ迫力ないぞ、どこのなまはげだ!
もう一回やりなおし!はい一回帰ってから!」

 なまはげは「えへへへっ」と照れた笑い声で、会釈をしながら玄関をきちんと閉め帰っていった。

 「何だ今年のなまはげはきっと○○の息子だなあれは」と家主が思っていると、なにやら外でひそひそ声がする。どうやら鬼どもがなにか相談しているらしい。

 ひそひそ声がやんだと思ったら ドゥオーウォーとものすごい怒声と桶をがんがん叩く音と共にがらがらと玄関をあけ鬼が3匹なだれこんできた。

 「泣ぐ子えねが〜泣ぐ子えねが〜!ナグコエネガ〜」と家に押し入り家の中の子供を探し回る。そして子供を見つけると、「とうさんのゆうごとちゃんと聞でるが〜 しゅぐだい(宿題)ヤタガ〜」と怒鳴り散らした。

 子供は恐ろしさのあまり泣きだし母親にしがみついている。別の鬼は祖母にむかってばば!ちゃんとママ食てるが〜えしゃさ(医者)えてるが〜」とわめき、
祖母は「○○しぇんしぇ(先生)にえてる」と答えた。

 「それはえがった〜」と荒れ狂いウォーと吠えながら振り向こうとしたときテーブルににつまずき障子に手を預けバリっと障子が破れた。

 「悪ごとしたじゃー!」鬼は頭を下げながら言った
「大したごとねじゃ〜!」と家主は答えた。福の神がきたと思えば安いもんである。

 この後なまはげたちはどんど焼きをしようとたいまつを持ちながら行進していたが一匹の鬼のたいまつの火が風にあおられ着ていたケラに火がつき、雪の中にあわてて寝転がって火を消したそうだ。

 家主はまさかあの「こんばんは」のなまはげじゃないだろうなと思ったそうである。



なまはげのイラスト及び
なまはげの写真はJTBの
「96 るるぶ秋田」より掲載させてもらいました。

   トップページへ Drの一気読切 目次へ